司法書士・行政書士 長谷川綜合事務所

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相続登記で『持分一部移転』ができるケース

2026.4.9

相続手続きでは、亡くなった方の名義を「まるごと」相続人へ移すのが原則です。しかし、実務においては、あえて「持分の一部だけ」を分けて登記するケースが存在します。


今回は、知っていると少し通な、古いマンションの相続にまつわる特殊なルールをご紹介します。


原則:相続登記で「一部移転」はできない


通常、不動産の相続登記では「亡くなったAさんの持分を全部、相続人Bさんに移す」という形をとります。「半分だけ名義を移して、残りは亡くなった人のままにしておく」といった状態は、実体と合わないため原則として認められません。

しかし、このルールには「将来の管理」を考えた合理的な例外があります。


背景:1983年の法改正とマンションの歴史

その例外が起こるのが、いわゆる「敷地権化されていない古いマンション」です。ここには法律の歴史が関わっています。

  • 昭和58年(1983年)以前: 建物と土地を別々にしか登記ができませんでした。

  • 昭和58年(1983年)以降: 法改正(区分所有法)により、建物(居宅部分)と土地(敷地の使用権)をセットで扱う「敷地権」という仕組みが誕生し、建物(居宅部分)と敷地(土地使用権)を一つにまとめて登記することが可能になりました。

現在主流のマンションは建物(居宅部分)と敷地(土地使用権)の「セット」ですが、改正前に建てられた物件では、今でも土地と建物が切り離された状態で登記されていることが多くあります。


実務の知恵:あえて「2回」に分けて登記する理由

例えば、亡くなったAさんが「101号室」と「201号室」の2部屋を持っていた場合を考えてみましょう。

  1. 建物の登記: 101号室と201号室、それぞれ個別に名義変更します。権利証(登記識別情報)も部屋ごとに1通ずつ発行されます。

  2. 土地の登記: ここがポイントです。土地の持分を一度に「全部まとめて」名義変更してしまうと、土地の権利証(登記識別情報通知)は「2部屋分で1通」しか発行されません。

これでは、将来「101号室だけを売りたい」と思ったときに、権利証の管理や手続きが非常にややこしくなってしまいます。

そこで実務上は、「まず一部を移転(101号室分)」「次に残りを全部移転(201号室分)」という2段階の登記を行い、土地の権利証も部屋ごとに分けて作成するのです。


専門知識:実際の登記ではどう書く?

この「あえて分ける」手続きの際、登記申請書の「登記の目的」欄には以下のように記載します。

  • 1回目の申請: 「A持分一部(順位番号●番で登記した持分)移転」

  • 2回目の申請: 「A持分全部移転」

形式上はバラバラに見えますが、どちらも原因は同じ「相続」です。目的はあくまで、各部屋と土地の持分をきれいに対応させることにあります。


まとめ:将来困らないための「整理の登記」

形式上は「一部移転」という珍しい形をとりますが、その目的はあくまで「将来の売却や管理をスムーズにすること」にあります。

「相続でも一部移転ができるケースはあります。それは、次世代が困らないようにするための、“整理のための登記”なのです。」

相続登記は、単に名義を変えるだけの作業ではありません。物件の背景をふまえ、将来の出口まで見据えた最適な手続きを選ぶことが大切かと思います。

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